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岩「スマホ持った？」
『うん』
岩「財布持った？」
『…うん』
岩「メガネ、」
『修学旅行前の母親かっ！』
岩「せめて父親にして？」
『……どっちでもいいよ、そこは』
ついに社員旅行の日がやってきた。
会社から空港までのバスもあるのだけれど、私は毎年なぜか兄に送ってもらっている。
荷物も多いし助かるといえば助かるが。
シートベルトをしたのを確認し、兄は車を発進させる。
岩「ふっか拾ってくね」
『はいよー……、なんで！？』
岩「乗せてくれってうるさいから」
彼が兄に頼むのはいつもの事で、逆方向を理由に断っていたはず。
岩「…これ」
信号が赤になったタイミングで兄が見せてくれたのは、超有名店のチョコレートの写真。
朝から並ばないと売り切れてしまうのだとか。
岩「こんなの貰ったら断れないよね…」
『なるほど…』
事情は十分に理解できた。
並ぶとも思えないし、どうやって手に入れたんだろう。
『美味しかった？』
岩「うんっ！！聞いてくれる？」
…ほんと、幸せそうな顔するなあ。
深澤さんの家に着くまでの間、ひたすらチョコの感想を聞いていた。
『…あ』
数メートル先で手を振る男性の姿。
そして、こないだから一方的に気まずい私。
大丈夫、大丈夫。平常心でいこう。
深「おはよー。照、岩本さん」
『おはようございます』
岩「おはよ。早く乗って」
深「はーい。悪いね〜逆方向なのに」
岩「絶対そんなこと思ってない」
深「思ってるってば」
岩「どーだか」
彼が乗ってからは、2人でずっと言い合っている。
相変わらず仲良しだこと。
深「そうそう。チョコどうだった？」
岩「ちょー美味かった。まじありがと。また頼むわ」
深「ええ……」
そんな会話を聞きながら、窓の外をボーっと眺める。
空港まであと30分くらいかな。
岩「今日はふっかと回るんだっけ」
『深澤さんと後輩の子と』
岩「……男？」
深「そ。異次元な足の長さのね」
岩「ふーん……」
見るからに嫌そうだけど「ふっかもいるし」と自分に言い聞かせている。
岩「で、2日目は？」
『同期と』
岩「……男？」
話の流れ的にそうなるか〜〜。
嘘をつくのは許されない。
でも＿＿＿＿ん？
ルームミラーごしに見えた彼は、必死に笑いを堪えている。
ちょ、助けてくださいよ！！いつもみたいに！！
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作者名：あんこ | 作成日時：2024年4月16日 23時
